フランス

気怠い夕暮に馴染む音楽

夏の夕暮れと湿度

 

 

過ぎし8月6日の夕暮れに開催しました、夏の夕べのフランス音楽の会、そのご報告です。

 

この日は、日中から気温が高く、かなり暑い日でしたが、夕暮れときとなるにつれて徐々に湿気がムンムンとわいてきました。

弦楽器には向いていないと言われる、高い気温と湿度。そんな中での演奏会です。

 

この日の曲目は、オールフランス。バロックはルクレール、そしてラヴェルとフォーレ。

このラヴェルの作品の中で、スペイン狂詩曲という作品がありますが、その1曲目の冒頭の半音階はスペインのうだるような暑さを思い起こさせる、そんなことを思い出しました。地平線が歪んで見えそうな暑さ。

 

実は、ラヴェルの作品を室内楽で演奏するのはこの度初めてでしたが、今回の演奏会では特にこのラヴェルにお喜び頂けて良かったです。

「遺作」を演奏する運びになったのは、知人や生徒さんがそれを聴きたい、とリクエストしてくれたからでしたが、実際に譜面を開いてみたら何をしたらいいのかわからない、と思うほど。それでもひたすら譜面と向き合い、その響きに身を委ねることで見えてきそうな何かがあったようです。

会場のプリモ芸術工房のスタインウェイは小振りながらも深い響きで、その響きも私のラヴェル初体験を助けてくれてくれたように思いました。

 

 

 

こちらが、その会場のスタインウェイ。

 

 

 

 

しかし、フォーレとラヴェル。フォーレはラヴェルの師であったのですが、双方が追及していきたい方向はかくも違っているのだな、と改めて思いました。

どの作曲家もそうですが、同じ時代で同じ地域とは言え、作品にするための考え方が全く異なるのですね。それは現代を生きる我々にも同じことが言えそうです。他人から見てなんとなく似たように見えても、その人の内部では全く違う、ということ。

 

 

この日は、会場下のレストランでお客様と懇親会を開きました。

 

 

このとき出されたワイン、「ダミアン」からヘルマン・ヘッセのかの名著「デミアン」のお話しをお客様とできたことがとても嬉しいです。ヘッセの「デミアン」は特別な書物。同じ名前を冠されたそのワインの味わいも、私には人生を通じて求めていく何かを感じさせられました。

 

冒頭の写真は、終演後に撮って頂いたものです。私もピアノの苅谷麻里さんもまるでリラックスした表情ですね。このように素敵に撮って頂けて幸せです。

 

暑い日の中での演奏会でしたが、人も体温があるもの。その人から発せられる温度や匂い、それと音楽はとても近いと思いました。その人の内なるところから発せられるものこそ芸術として昇華できるものなのかと思います。

 

芸術とは、ある一面だけでは成り立たないように思います。音楽、思想、詩や踊り、香りや味わい、リズム。まだまだありますね。なんら芸術的でなさそうな会話もモーツァルトの手にかかれば軽やかな響きに生まれ変わります。

私たちは、気が付かないうちに芸術的に生きているのかもしれません。

 

そんな風に、自分のフランスのソナタから懇親会のヘッセまでいろいろと考えさせられた演奏会でした。なかなかそのように深く考えさせられる演奏会もあまりないので、貴重な会でした。

 

 

 

 

夏の夕べのフランス音楽

夏の夕暮れ時 軽やかで彩り豊かなフランス音楽のひと時

 

 

いわゆるフランス音楽と称される代表的な作曲家にラヴェルやドビュッシーがいます。他にもフランスの作曲家は数多くいますが、なんとなく軽やかな雰囲気を想像しやすい作風の作曲家たちがそう呼ばれるような印象があります。

今回はそのラヴェルのヴァイオリンソナタ「遺作」、そして同時代のフランスのヴァイオリン音楽として代表的な作品であるフォーレのヴァイオリンソナタ1番での演奏です。

フォーレの1番のソナタは、颯爽とした青みがかった風が見えるかのような音楽、そのような印象があります。そのぶん、夏を過ぎるとどうも爽やかすぎるような感じ。晩夏ともなると夜は冷えるのにまだ薄着でいるような、この作品はフォーレがまだ若い頃に書かれたものです。

初めてこの曲を聴いた頃、ちょうどアルテュール・ランボーやマラルメの詩集をひもといていており、ランボーの10代の頃の詩「感覚」という作品にまるでこの曲の1楽章のような印象を受け、それはその後どれだけ月日が経っても変わりません。

 

そしてラヴェルの「遺作」は、彼のもう一つのソナタと違い単一楽章で作られています。個人的にラヴェルという人は非常に論理的な作品を書く人だと思っており、彼独特の洒落た無駄のないセンスと軽やかさを論理的にまとめあげている、そんな印象です。ラヴェルの音楽に触れるとまるで自分もセンスが良くなるような、そんな魅力を感じています。

ルクレールはバロック時代のフランスの人。この3番のソナタは明るく陽光が差し込む穏やかな部屋にいるような1楽章に始まり、この時代の作風に従って舞曲のリズムにのった4楽章へと続きます。

 

共演のピアニストは、今年春の自由が丘の古民家シェア奥沢でご一緒した苅谷麻里さん。苅谷さんはフランス音楽もとてもお好きで、特にラヴェルはご自身の感性とよく合うのだ、とお話しなさっておられました。NHK児童合唱団での伴奏で大変ご多忙でいらっしゃる中、多数のアンサンブルの演奏会にも出演されている敏腕ピアニストとの共演はとても頼もしい限りです。

 

会場のプリモ芸術工房は、東急目黒線洗足駅の改札を出たすぐのところにあります。こちらのピアノはよくお手入れされたスタインウェイで、かなり著名な国内外の演奏家の方々も多数演奏していらっしゃいます。この辺りの街並みは穏やかでありながら空気が若々しく、訪れることが私も楽しみです。

 

 

日時  8月6日 17時30分開演(17時開場)

場所  プリモ芸術工房

入場料 2500円

 

曲目  ルクレール ヴァイオリンソナタ第3番

ラヴェル  ヴァイオリンソナタ「遺作」

フォーレ  ヴァイオリンソナタ第1番

 

ヴァイオリン 田中幾子  ピアノ 苅谷麻里

 

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