バルトーク 2台のピアノと打楽器のためのソナタ

鳴り渡る打楽器と繊細なピアノのアンサンブル

 

過ぎし10月の1週目。

昭和音楽大学での教員教員研究発表演奏会に出かけてきました。

お目当ては、こちらの講師でいらっしゃるピアニスト日置寿美子さんによる、
バルトークの大曲。
2台のピアノと打楽器のためのソナタ。

ピアノ  日置寿美子、松岡淳
打楽器  石内聡明、星出朱音

 

写真ではわかりにくいですが、
ピアノの鍵盤が客席に向いているセッティング。

ピアニストの背中が客席側に向くというのは珍しい
と思いましたが、
いざ演奏が始まるとその理由がよくわかりました。

 

 

数々の打楽器が無数に鳴り響くような音楽は
バルトークの構造をもってぐいぐい推し進められてゆき、
そこに華添える美しき澄んだピアノの音。

 

かねてより、日置さんのピアノの音色は透明感に溢れていると思っていましたが、

この澄んだ音色だからこそ見えてくるバルトークの音楽。

 

バルトークという人は、若いときにはピアニストの道を目指していたのですが、
あるコンクールで優勝できず2位だったことで作曲の道を選んでいます。
そのコンクールで優勝したのが、かのウィリアム・バックハウス。
バルトークがいかに素晴らしい演奏技術を保有していたのかよくわかる出来事です。

 

それにしても、彼特有の構造的な音楽は、聴いていてまるで強固な建築物を音にして表されているかのようです。

凄まじい精度のアンサンブルが必要とされるこの曲。

これはバルトーク自身の指示によるセッティングだそうですが、確かに打楽器奏者とピアニストが向かい合わないと演奏不可能ではないか、と思わせる精緻かつ複雑さ。

ピアノの音色が澄んでいることで、
打楽器のリズムがよりくっきりと引き立ち、
打楽器の動きがまたピアノを引き立てる。

彼がピアノ演奏について常人を超えた知見があったからこそ、
そして何より、日置寿美子さんの音色だから成り立つ音楽。

 

かつてアメリカ、インディアナ大学大学院で
ハンガリー出身のG・シェボック教授のもとで
バルトークを中心に学ばれたという
その経歴も演奏からよく伝わってくる。

 

そして、日置さんご自身が解説文に書かれていたこと、
以下に引用しご紹介致します。

『バルトークのピアノ曲は
「ピアノの打楽器的奏法」という言葉が独り歩きして、
ともすると「叩く」と誤解されがちだが、
本来はそうではない。

シェボック教授直伝の奏法によって、打楽器の音との融合を図り、
当初から「室内楽作品」として作られた
この曲の室内楽としての魅力と力強さとを
表現したいと考えている。』

 

この言葉をそのまま音にして聴くことができた演奏でした!

 

なかなか、
自分の思いをそのまま演奏で伝えるということは難しいものです。
私も自分の思いとは違う印象を持たれることがあります。

しかし、それが完成されたあまりの素晴らしい名演に、
これはまた聴きたい!と強く思わせられた演奏会でした。

日ごろからとても誠実に音楽に向かい合ってらっしゃるお人柄だから
成せることなのかもしれません。

ちなみに、日置さんは、

ブラジルのクリチバ市交響楽団の定期演奏会で
バルトークのピアノ協奏曲第3番を演奏された際、
2000人規模の大ホールでスタンディングオベーションだったとか!

その出来事も彷彿とさせる素晴らしいバルトークでした。
聴けて良かった。

 

比類なきバルトークのピアノ名演をご披露なさった
日置寿美子さんの公式ホームページはこちら。
ピアニスト 日置寿美子

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